私は根っからの運動音痴ですので、小学生の頃、「昼休みに外でドッジボールをする」なんてのはなるべく避けていました。
ともすると休み時間にはたいてい、絵を描いて遊んでいるか、図書室で本を読んでいるか。
そういう子、クラスに2~3人くらいいましたよね? それが私です。
その3人くらいの中に、私なんて足元にも及ばないくらいの読書家の女の子がいて、図書室に行くといつも、誰も手に取らないような分厚い重量感のある本を黙々と読んでいました。
図書室の端っこの方に、かなりの場所を占領して並べられた「世界の民話集」みたいなシリーズ本。
「なにか面白いお話あったら教えて」という私に、彼女が勧めたのは
イギリスの民話集。
分厚い本を開くと、想像以上に細かい字がぎっしり。
うへぇーと辟易しましたが、ひとつひとつのお話は短くて、とても読みやすかった。
どんなお話が載っていたのか、今ではほとんど忘れてしまいましたが、ひとつだけ、忘れられないお話があります。
小学校5年生だった私の心に、色んな意味で衝撃的だった、イギリスの昔話です。
以下、おぼろげですが―
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「カメの遠足」
むかしむかし、カメの一家が住んでいました。
おとうさんガメ、おかあさんガメ、子ガメの坊やの3匹は、近くの丘までピクニックに行くことにします。
丘の上で、みんなでお弁当を食べましょう。
おかあさんガメがバスケットにお弁当をつめて、さぁ出発。
丘はすぐそこです。
すぐそこなのですが、ノロマなカメの歩みです。
一年歩いても、まだまだ家から出たばかり。
一年半で、ようやく半分くらい進んだでしょうか。
二年たち、二年半たち、ようやく丘の上に三匹が到着したのは、出発から三年後のことでした。
がんばって歩きました。お腹はもうペコペコです。
さぁ、お弁当を食べましょうと、バスケットを開けました。
おかあさんガメが用意してきたのは、サンドイッチと…ツナやスープ、フルーツなどの缶詰です。
それらを取り出して草の上に並べたとき、おかあさんは重大な失敗に気付きます。
なんと、おかあさんガメは缶切りを家に忘れてきてしまったのです。
ええっ!
缶切りがなくては、缶詰が開けられません。
しばらく考えて、おとうさんガメが言いました。
坊や、お前が家に一度帰って、缶切りを持ってきておくれ。
お前がここへ戻ってくるまで、私たちは絶対に何も食べないから。
ずっとずっと、待っているから。
坊やは仕方なく、ノロノロと出発し、やぶの中へ見えなくなりました。
おとうさんガメとおかあさんガメは、じっと子供の帰りを待ちました。
待ち続け…一年が経ちました。
坊やはまだ戻りません。
二匹のカメは、お腹が空いてフラフラです。
けれど坊やの帰りをじっと待ち続けます。
二年が経ちました。
サンドイッチを、少しだけ食べてしまおうか―
どちらかが提案すると、どちらかがたしなめます。
坊やと約束したんですから、待ちましょう。
待って待って待ち続け、三、四年…ついに六年が経ちました。
二匹のカメは、いよいよ飢え死にしてしまいそうです。
どうだろう。あの子もそろそろ帰ってくる頃だ。
サンドイッチを少しだけ食べ始めよう。
そうですね、このままでは死んでしまいます。
少しだけ… と包みを開けて、サンドイッチを取り出し
二匹のカメがそれを口に入れようとしたその瞬間、
近くのやぶの中から、子ガメが出てきて叫んだのです。
「やっぱり! ふたりとも約束を破るんだね!
絶対に食べないって言ったじゃないか!
ぼくは、ここにずっと隠れて、見張っていたんだからね!」
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このお話は、ざっくりとジャンル分けすると「笑い話」というカテゴリーに属しているようですが、
小学生だった私には、ちっとも笑えなかった。
カメたちの食に対する執念が、お話の中にぎゅうぎゅうに詰まっているような印象を受けました。
結局子ガメとの約束を守らない親ガメも、
きっと親ガメが自分を裏切るに違いないと予想して家に戻らず隠れていた子ガメも、
なんだか憎たらしく感じました。
何年もかけてピクニックに行こうとする発想とか
腐敗しないサンドイッチとか
お弁当に缶詰、とか
短いお話の中に、そんな理解できない不可思議な要素も散りばめられていて、
あの図書室の雰囲気や、深緑色の本の表紙、ちょっと怖いテイストの挿絵、本好きの友人。
断片的ですが、今やお母さんガメくらいの歳になった私の記憶に、まだ残っています。
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私は、飢え死に寸前でも子供との約束を守れるだろうか?
遠足に缶詰を持っていくときは、絶対に缶切りを忘れないようにしよう。
そんな時
蓮見商店に行けば
実用三徳缶切り 210-
貝型缶切り 250-
二種類の缶切りが、何年も何年も絶賛発売中。
この平成の昨今、ツナだったりみかんだったり大抵の缶詰は、缶切りを使わないでも開けられるイージーオープン缶(プルトップ付)が採用されています。
あんまり缶切り使わないよねー。
子どもも使い方知らない子が多いんじゃないかな?
でもね、たまーに 今でもありますよ、缶切りが必要な缶詰が!
キッチンの引き出し確認してみてね。
缶切りあるかな?
蓮見商店で、お待ちしております。
子どもに買いに来させても、いいですよ。
帰りをちゃんと、待っててね。
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